視察レポート(2007年11月)

第2回 市区町村議会議員研修会

日付:2007年11月5、6日
場所:東京グリーンパレス
主催者:自治体問題研究所

参加のねらい

地方自治の課題を再度明らかにする中で、諸課題に対して地方議会がどう対応すべきか整理する研修会の主目的を達成するため。

内容・所感

1日目:(1)これからの議会に対する期待 竹下登志成(自治体問題研究所事務局長)
要旨

現在の地方自治体の課題は5点挙げられる。財政難、地方間格差、民営化、市町村合併と地方分権。財政難では自治体職員の削減と団塊世代の退職が重なり技術蓄積に不安。合併に関しては特例債の発行が許されながら、最初の合併例となった兵庫県篠山市の収支見通しは6年後には夕張市と同様債権団体に陥る可能性がある。また民営化や外部委託も問題を抱える。

所感

こういった講義は当然包括的な視点からの問題提起となるわけだが、とりわけ竹下氏が指摘した問題で何が当市において一番課題であるかを考えなければいけない。行政運営のベースとなる財政運営が確実に執行されるのはもちろんだが、格差に関しては富裕団体という位置づけから補助金などが削減される中、逆差別ともいうべき状況の続く中でいかに財源の確保を図るかは検討課題であろう。

なお、竹下氏は上記5課題を解決するそのキーポイントこそが議会の存在である、との結論付けを行っているが、もちろん5課題全てにおいて議会が関わるシーンはあるわけだが、その関わりをいかに実効性のあるものにするかは各自覚にかかっていように思われた。

1日目:(2)地方自治、21世紀の課題と地方議会 宮本憲一(大阪市立大学名誉教授)
要旨

社会サービスのナショナルミニマムの要求のための財源として国庫補助金制度などが作られたが、地方自治を原則とすれば独立税源でこの需要を賄うことが求められる。しかし地方財政は質・量ともに格差が広がっており、この財政力の格差をどう解決するかが重要な課題である。

なおかかる状況下においては地方職員の自主的な行政能力とともに地方議会の自治に基づく政治能力が求められている。

所感

地方議会として住民ニーズを丁寧にくみ上げることの必要性が再度指摘されたと思う。地方議会は立法権、予算制定、決算監査、行政の監査とチェックをするなどといった基本的権能すら行使しきれていない、という指摘には同意せざるおえない。しかし、地方議会としての政策を形成する過程においては人口、所得水準と階層、富の分布、産業好悪阿須と産業組織、財政・金融などの基礎データを作成することを求めており、これだけのデータの集積と分析能力は、どの地方議会も持ち合わせていないように思う。政務調査費の位置づけなどが明確になっており、多少は調査にかかる環境は改善しつつあるが、現在市議会で制定されている自治基本問題調査特別委員会でも検討されているように、議員の調査能力の向上のために各専門家の意見を集約できる体制づくりは必須のものと思われる。また確実に住民のニーズを網羅するための仕組の構築も必要だろう。

2日目:(選択科目)自治体の財政:初村尤而((社)大阪自治体問題研究所研究員)
要旨

財政民主主義という観点からは予算は議会で決定されるものの、予算や財政は行政のものではなく、住民自身のものであり、予算や財政状況に関して直接関与・参画するシステムの構築が必要。

地方交付税は所得、法人、酒、消費、たばこの法定5税分から構成されるものであり平成19年度ベースでは入り口部分で14.6兆円であるものの、地方財政計画においては15.2兆円が必要とされており、当年度においては6億円分の地方交付税が圧縮されたということであり、なお交付税算定台帳の作成にあたっては単位費用の変更によって交付税削減の傾向。なお国庫負担金・補助金・委託金の国庫支出金に関しては、それまでこの支出金の枠内で配分されていた経費が地方交付税に組み入れられつつあり、額面上は変更がないものの、組み入れられた経費が実質的にはカットされる傾向となるのは必須。また自治体の予算編成や事業決定への多大な影響をもたらす支出金のあり方は補助事業に伴う超過負担などとも一緒に問題点として挙げられるであろう。

通常の行政運営に関しての財政分析という点においては、財政当局としては性質別歳出がもっぱらの関心ごとであろう。なお千代田区は条例で経常収支比率を定めている。

所感

今回の研修会での選択科目で一番出席が集中したのが当講座ということで、夕張市の事件以降財政についての問題意識が議員間でも高まっていることと感じる。というのも事件以降の教訓の一つとして、住民監視の強化はもちろんのこと、議会が職責を果たしていなかったということも挙げられたからだ。(しかし、前述したように、改竄して提出されたデータを分析できる能力が現在の地方議会にあるのかといえばかなり疑問を持たざるおえない)

住民参画という点からいえば、鳥取県の例などは全ての予算編成過程を詳細な内容と共にHP上に掲載するなどしてその仕組みづくりを着手しており、学ぶべき点が多いであろう。行政の保有する情報は住民のものであるというスタンスに立てば、おのずとその情報の提供の仕方にも工夫が求められるところであって、決して現行の状態では説明責任を果たしているとは言いがたい。

なお国庫支出金に関しては、補助金の扱いに関してはやはり悩みが多い。補助金がらみの事業の開始が国から促され着手しても時限的な補助にとどまるため、その後の運営にはかなり悩みを抱えるので、このひも付き事業の導入に対しては国と地方の構造的な問題でありながらも解決手段を見出したい。

またこの財政健全化法についても言及されたが問題点として、健全化段階から悪化した場合には住民参画の途が狭まるということが指摘されていたが、むしろ、外部監査の義務化、財政再建計画の議決が必要など、議会の積極的関与が必要になることから、情報のディスクロージャーということに関しては寄与する法制という印象を受けた。

 

PAGE TOP