周産期医療における中核病院としての役割
日付:2010年11月16日(火)
場所:藤沢市民病院
対応者:藤沢市民病院:総務課参事・水島富士雄氏、事務局参事・総務課長 中島直氏
視察のねらい
腰越での取り扱いが終了してから市内でお産を扱う病院は湘南鎌倉総合病院1箇所のみとなり、鎌倉市にとってお産できる場所を確保することは喫緊の課題であった。市民要望を受けて昨年2月に全国初の医師会立参加診療所「ティアラかまくら」がオープンした。一方、周辺の開業医や医療施設の方々からはそれまで現存する医療施設に医師・予算と集中投下すべきであって、新規開設は望ましくないという意見も頂いている。
しかしながら、ティアラかまくらでは現在数ヶ月先まで出産予約が入っている状況であり、市民要望の受け皿として確実な役割を果たしている。重要な役割を担う施設という意識を持ちながら、今後周辺医療施設などと連携を確立し、安心できる周産期医療体制を強固にする役割が行政に求められており、今後の課題を検討するため隣接の藤沢市民病院を視察した。
なお先に県立子ども医療センターの視察も実施しており、副院長に隣接自治体の声を伺うべきではというご提案も頂いている。
ヒヤリング事項
- 鎌倉市民の出産の受け入れ状況 (9月末までの実績ベース)
平成20年 出産総数 619件 内 藤沢 463件(75.8%)、鎌倉 38件(6.2%) 平成21年 出産総数 707件 内 藤沢 498件(70.4%)、鎌倉 51件(7.2%) 平成22年 出産総数 347件 内 藤沢 277件(79.8%)、鎌倉 11件(3.2%) ティアラかまくらの開設10ヶ月が経過した昨年11月よりペースが落ちており、今年度その影響は数字に顕著に現れている。
なお分娩料は市内、市外と差をつけており、市外は50%の割り増しとなっている。
- 中核病院として鎌倉からの緊急状態の妊婦受け入れ状況
- 県で区域分けを実施している。
- 昨年4月~3月 母体搬送は9件依頼があった。
- 内受け入れが可能であった3件は全て湘南鎌倉からの搬送、6件はティアラかまくらから(3月破水、6月)
- 連絡があった場合は事務局で受け入れ先を探す。
- 藤沢市民病院と湘南鎌倉総合病院は医師の個人的なつながりがあり、意見交換も日常的に行っている。
- 受け入れが不可能だった場合の理由など
- NICUの空き状況、看護士・医師受け入れ体制の状況、あまりに早産な状態、等。
- 藤沢市民病院のNICU数は比較的多く、川崎でも増加させている。
- 鎌倉は横浜・藤沢にも近く、三浦半島圏域にも所属しており、地の利はある。しかし横須賀はすでに産科休止。
- 寒川・大和・藤沢という医療圏域 施設・医師の集約を行っても搬送に許される時間は30~60分。
- 現在のティアラかまくらとの連携状況
特段行っていない 矢内原医師とはあった - その他周産期医療に関しては専門家・スタッフが少ない。小児科で、とりわけ新生児を診られる医師が必要。女医が多く、柔軟な働き方のできる体制づくりが求められている。藤沢市の北部では19床、また鵠沼でも10数床の産科診療所が開設予定。開業できるような誘致策が必要ではないか
→ 援助がない医療街区という考え方
→ 土地代安くしている。県が主導する広域の考え方には期待できない。 - 藤沢市民病院の今後指定管理の課題も抱えながらも現在は直営。また広域での究明センターの役割も担っている。しかし市の財政状況を考えた場合今後の見通しは厳しい。民営(採算?)特殊な行政が必要 国・県の補助のあり方は再考すべき。
まとめ
産科が不足しているという声が多くありながらも、隣接の藤沢市には2箇所も新設の産科診療所が設置されるという話は衝撃的であった。
鎌倉市内の産む場所をより確保するためには誘致策という観点も必要と痛感した。
また隣接していながら、藤沢市と情報交換の場も中々ないという現状の中で、とりあえずはそこからスタートしてもらえれば、お互いの状況把握の促進に繋がるのではないかと考える。
なお周産期医療体制の中で中核病院という重大な役割を担っている藤沢市民病院だが、市財政という側面から今後の運営についてもこのままという保障はないわけで、大変厳しい状況におかれている。鎌倉では市民病院を持たないため、こういった議論からは解放されているが、ティアラかまくらの運営については、市民の生命・健康を守る観点から考えるべき。